去る8月7日(日)、土崎みなと歴史伝承館で、土崎空襲紙芝居の上演と3人の戦争体験を語る会が行われ、約50人の参加者が真剣な表情でお話に耳を傾けました。
以下、8月110日付けの秋田魁新報の地域面に掲載された記事から引用します。(『 』が引用部分)
『紙芝居は、元小学校教諭の渡辺恵子さんが、友人の母で土崎空襲を体験した高橋静さんの話しを基に制作した「しずちゃんが見た戦争」。兄が戦死し、空襲の際に父が蔵の屋根に上がって「自分も死ぬ」と叫んだ事、翌朝になって赤ん坊を背負った女性や、爆弾の破片が刺さった子どもの遺体を見たことなど、悲惨な経験が語られた。』
紙芝居では、授業で教科書の外来語を墨塗りしたこと、臭さをこらえながらし尿運びをさせられたことなど、当時の学校生活も描かれていました。
『語る会では、東京出身で男鹿市に強制疎開させられた経験を持つ洋画家の政岡悦子さん(85)、土崎空襲で生後10カ月の末弟を失った富樫仁英さん(88)、満州出身で終戦直後に中国国内を1年間さまよったという鈴木諄さん(89)の3人が、それぞれの実体験を語った。』
政岡さんは、疎開先の学校で秋田弁の会話に加わることができず、仲間外れやいじめなどを受けた経験、富樫さんは亡くなった弟の火葬のために死亡診断書を書いてもらうために、遺体を背負って土崎の町の中を半日近く歩き回ったという体験などを話されました。
『終戦当日にたまたま朝鮮国境の鴨緑江へ1人で遊びに行っていたという鈴木さんは、暴動で運輸手段を失い、列車も止まり帰れなくなったという。当時まだ12歳。家族と再会を果たし帰国するまでの1年間、たった一人で生き抜くため、盗みなどもしたと言い、「戦争は人間性を失わせる。今後、1人の日本人にもこんな思いをさせたくない」と力を込めた。』
鈴木さんは、お話を聞いてもにわかには信じられないような放浪生活をユーモアを交えながら、しかし一方で理不尽な戦争への強い怒りを露わにしながら話されました。
戦争の中で、子どもたちがいかに苦境に追いやられたか?生死の狭間の中で、生きることそのものに必死にならざるを得なかったのか?体験者の証言の一つ一つが胸に迫りました。これからも、戦争のリアルを学び、その悲劇を繰り返さないための方途を共に考え合う場を作っていきたいと思います。
以下、アンケートの記述のいくつかを紹介します。
「戦争を実際に体験した人が減っている中で、今回の話しはとても貴重なものと感じた。戦争は理性、人の心をも奪い、人間であることを忘れてしまう恐ろしいものであると改めて学ぶことができた。」(19)
「学校では学ぶことのないようなお話をたくさん聞くことができて、よい経験になりました。」(20)
「住んでいる土崎が舞台の紙芝居だったので、リアルな感じだった。当時のこと、戦争についても話を聞けて、あらためて平和について考えさせられた。今の時代の幸せを感じた。戦争の実際の体験を聞ける貴重な機会となった。戦争に負けた後の兵士の父の話しが印象的だった。鈴木さんの89才とは思えない話がうまくひきよせられました!すごすぎます。」(33)
「身近で戦争体験の話しを伺うのは初めてでした。自分が生きている時代に戦争など起きることはないと思っていましたが、今現にウクライナとロシアのいつ終わるかわからない戦が行われています。この戦いが拡大しないことを願うばかりです。人間の理性を失う、正しい判断ができなくなる、そのような世界を戦争は作り出してしまうのだと思います。平和を願います。孫達のためにも。」(68)
「生の声で実体験をお聞きでき胸にきました。わたしも高齢になりましたが、戦争を知りません。想像を絶する体験委「大変なご苦労でしたね」ではすまされない痛み・苦しさを感じました。」(70)
「紙芝居は当時を知るうえでとても良く出来ていると思います。特に今年はウクライナ戦争という、悲しい出来事がありひしひしと心に響きました。
3人の方のお話しは涙なしには聞けない貴重な肉声(鈴木さんのお話しは笑ってしまいましたが)。戦争ぜったい反対!!強く思いました。今日来れて大もうけです。」(71)
「紙芝居・・・よく作って下さいました。本当にこのような証言は重要です。若い世代の皆さんが力と願いを込めて作られたのですネ。素晴らしいです。
政岡さん・・・語りがいいですね。子どものころの様子が目に浮かびます。トラジの花。この話は島津さんのことですね、いろいろと思い出しました。ありがとうございました。
富樫さん・・・6年生の少年が弟を背負って死亡診断書をもらいに町中を歩いたという話、よく分かりました。土崎に皆さんの無念の思いです。
鈴木さん・・・何度きいてもおもしろいし、戦争の全体の中での個、コントラストがはっきり、分かりやすいですね。日本の軍隊の実態など、国民には知らせないようにしたのですね。理性を失わない様に生きたいと思います。ありがとうございました。」(81)
「紙芝居では、当時小学生のしずちゃんの77年前の8月14日夜の土崎空襲の体験した様子が、実によく絵と語りで表現されていて、当時の悲惨な状況がわかりました。東京からの空襲疎開で秋田にきた政岡さん、土崎の日石のそばで弟が空襲で殺された富樫さん、小学6年での満州での逃避行の苦労した鈴木さんのはなし等々、生々しくきくことができて、2度と戦争はあってはならないとあらためて思わされた。平和の大切さを思い直す、貴重な集会であった。今後も続けていくことが、必要と思います。」(82)
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